海外買付をやっていたとき、いちばん「これで辞める人がいるだろうな」と思っていた作業があります。
買付先への英文メールです。
在庫確認、取り置きの依頼、発送の可否、支払い方法。全部英語で聞かないといけない。
今のAIでこれがどうなるのか、実際にやって記録しました。結論から言うと、英文のたたき台は書けます。ただし解決していないことが2つあります。
先に前提を3つ
① ネットで買える商品なら、メールは書きません。
海外のECサイトを見て在庫と価格を確認し、出品する方法があります。サイトに載っていて在庫や購入条件が確認できるなら、そのまま注文できます。 わざわざ聞く必要がない。
メールを書くのは、ブランドは扱っているのに、その商品がECサイトに出ていないときです。店頭や倉庫に在庫が残っている可能性がある。そういう商品を扱おうとすると、問い合わせが必要になります。
これは無在庫か有在庫かとは関係ありません。 有在庫でも、店頭にしかない商品を仕入れたいときは同じようにメールを書いていました。
② つまり、これは差別化のための作業です。
ネットで買える商品は、他のバイヤーも同じように買えます。同じ商品が並べば、価格競争になりやすい。
ECサイトに出ていない商品を引っ張ってこられると、そこが変わります。他の人が見つけにくいものを出せる。英文メールは、そのための手段でした。
逆に言うと、やらなくても物販は成立します。 ネットで買える範囲でやるなら必要ない。これは「ライバルと差をつけたい人」のための作業です。
③ ブランドによって、使える買付ルートは違います。
ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルといったブランドを、一般のセレクトショップで広く取り扱われるブランドと同じ前提で探すことはできません。正規販売の経路や問い合わせ窓口は、ブランド・商品カテゴリー・国によって異なります。
ただし、3ブランドをまとめて「直営店でしか売っていない」「問い合わせる相手がいない」と言い切るのも正確ではありません。たとえばルイ・ヴィトンの公式案内には、一部製品の正規販売先として24S.comの記載もあります。
この記事の英文メールは、取り扱いのあるセレクトショップや百貨店に、ECサイトでは確認できない商品の在庫を問い合わせる場面を想定しています。 ブランドごとの直営店対応や現地の買付パートナーについては、次の記事で扱います。
もうひとつ書いておくと、私は英語が読めません。 読めないまま10年やっていました。ここが今回の話の中心です。
当時どうしていたか
日本語で文面を考えて、翻訳サイトにかけて、英文にする。
そして、その英文をもう一度日本語に訳し戻していました。
意味が変わっていないかを確かめるためです。読めないなりの検算でした。これは当時からずっとやっています。
ただ、この検算がうまく機能しませんでした。訳し戻した日本語が変になったとき、元の英文が悪いのか、訳し戻しの精度が悪いのか、区別がつかない。
当時の翻訳サイトは、まともな日本語を入れてもおかしな日本語が返ってくることがありました。だから「変だ」と思っても、何を直せばいいのか分からない。結局、何周かして「まあ通じるだろう」で送っていました。
これが当時いちばん気の重い作業でした。時間がかかるというより、送ったあとに不安が残る。
AIに書かせてみた
条件を決めて試しました。
- 状況:ブランドは扱っているが、その商品がECサイトに出ていない
- 商品:メンズのコート、サイズ48、ブラック
- 聞くこと:①在庫があるか ②取り置きできるか、いつまで ③日本へ発送できるか・送料 ④支払い方法
今回の初回問い合わせでは、関税額までは聞きません。在庫と購入条件を先に確認するためです。 実際の注文時には、関税・輸入消費税が価格や送料に含まれるか、受取時に別途支払うかも確認します。
出てきた英文(1回目)
Subject: Stock inquiry – [Brand] wool coat, size 48 (black)
Dear [Shop name],
My name is Taka, and I am writing from Japan.
I am interested in the following item, which I could not find on your
online store:
Brand: [Brand]
Item: [Product name / reference no.]
Colour: Black
Size: 48
Could you please let me know the following?
1. Do you currently have this item in stock in store?
2. If so, would it be possible to hold it for me? Until what date?
3. Do you ship to Japan, and what would the shipping cost be?
4. Which payment methods do you accept (credit card, PayPal, bank
transfer, or an invoice)?
I purchase regularly for customers in Japan, so if this goes well I
would be glad to contact you again for future orders.
Thank you very much for your time. I look forward to hearing from you.
Best regards,
Taka
[Address in Japan]
[Phone / email]
翻訳サイトの時代とは、明らかに別物に感じました。形式が整っていて、聞きたいことが番号で並んでいる。
ただ、これが自然かどうかは私には判断できません。
別のAIに添削させた
そこで、別のAIに「実務で送る英文として直すところはあるか」と聞きました。
4箇所の指摘が返ってきました。
直したところ
① in stock in store → in stock
店頭在庫に限定する必要がない。倉庫にあっても構わないので、範囲を狭めないほうがいい。
② Until what date? → If yes, until when?
もとの表現も間違いではありませんが、前の質問に続ける聞き方として整えました。
③ or an invoice を削除
ここが一番大きい指摘でした。
初回の問い合わせで「請求書」を支払い方法の一つとして並べると、こちらが求めている条件が曖昧になる可能性があります。今回は、クレジットカード、PayPal、銀行振込を例として挙げれば十分です。
なお、invoiceは「請求書」のことで、それ自体が支払い手段でも、必ず掛け払いを意味する言葉でもありません。 前払いのために請求書を発行してもらう場合もあるので、「invoiceと書くと必ず掛け取引になる」という意味ではありません。
④ I purchase regularly → I regularly source items
purchase でも間違いではないが、source items for customers のほうが「日本のお客様のために商品を探して買い付けている」というニュアンスになります。
修正後の英文
4つの添削とは別に、素材を指定していなかったのに件名に入っていた wool も削除しました。AIが条件にない情報を足していないかも、確認が必要です。
Subject: Stock inquiry – [Brand] coat, size 48 (black)
Dear [Shop name],
My name is Taka, and I am writing from Japan.
I am interested in the following item, which I could not find on your
online store:
Brand: [Brand]
Item: [Product name / reference no.]
Colour: Black
Size: 48
Could you please let me know the following?
1. Do you currently have this item in stock?
2. If so, would it be possible to hold it for me? If yes, until when?
3. Do you ship to Japan, and if so, what would the shipping cost be?
4. Which payment methods do you accept, such as credit card, PayPal,
or bank transfer?
I regularly source items for customers in Japan, so if everything goes
well, I would be happy to contact you again for future orders.
Thank you very much for your time. I look forward to hearing from you.
Best regards,
Taka
[Address in Japan]
[Phone / email]
この文面はテンプレートとして使ってもらって構いません。 件名・ショップ名・ブランド名・商品名や品番・色・サイズ・署名を、ご自身の情報に差し替えてください。商品がコートでない場合は、件名の coat も変更します。
「継続的に買い付けている」という一文も、ご自身の状況に合う場合に使ってください。
逆翻訳は昔からやっている。変わったのは確かめやすさ
出てきた英文を、もう一度日本語に訳し戻す。
これは新しい手法ではありません。翻訳サイトの時代から、私はずっとこれをやっていました。 英語が読めない私が、内容を確かめるために使っていた方法です。
今回、違いを感じたのは戻ってくる日本語の読みやすさです。
当時は、訳し戻すと日本語のほうが崩れました。だから「変だ」と思っても、英文を直すべきなのか、訳し戻しがおかしいだけなのか、判断できなかった。検算が検算にならない。
今回は、戻ってきた日本語が普通に読めました。聞きたいことが抜けていないか、数字や条件が変わっていないかを確かめやすい。
ただし、自然な日本語に戻ったからといって、英文が正しいと保証されるわけではありません。 AIが誤りを補って訳すことも、同じ誤解を引き継ぐこともあります。逆翻訳は確認の補助として使います。
上の英文を訳し戻すとこうなります。
[ショップ名] ご担当者様
はじめまして。日本のTakaと申します。
下記の商品を探しており、オンラインストアでは確認できなかったため
ご連絡いたしました。
ブランド:[ブランド]
商品名/品番:[ ]
カラー:ブラック
サイズ:48
以下について教えていただけますでしょうか。
1. 現在、こちらの商品は在庫がございますか
2. 在庫がある場合、取り置きは可能でしょうか。可能な場合、
いつまで取り置きできますか
3. 日本への発送は可能でしょうか。また、送料はいくらになりますか
4. ご利用可能なお支払い方法を教えてください
(クレジットカード、PayPal、銀行振込など)
日本のお客様向けの商品を継続的に探しております。今回お取引が
できましたら、今後もお問い合わせさせていただければ幸いです。
お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。
意図した質問が含まれているかを確認する助けにはなります。
ただしニュアンスまでは確認しきれません。 失礼になっていないか、商売の相手として自然か。そこは訳し戻した日本語だけでは判断できません。
解決していないこと(1)返事が来るかは、文面だけでは決まらない
正直に書きます。
英文が自然になっても、返事が来るとは限りません。
当時、返事が来る店と来ない店がありました。その差が何だったのか、10年やって分かりませんでした。
文面だったのか、店の規模だったのか、タイミングだったのか、そもそも海外発送をやる気がなかったのか。どの要因だったのかは、検証できていません。
AIが英文を良くしても、ここまで解決するとは限りません。「AIで買付が自動化できる」と書いてある記事を見かけますが、この部分について書いているものを、私はまだ見ていません。
解決していないこと(2)当時と今では、為替の前提が違う
これは数字で出せます。
| 通貨 | 2017年(年間平均) | 2018年(年間平均) | 2026年9月14日 |
|---|---|---|---|
| ユーロ | 128.17円 | 131.92円 | 179.55円 |
| 英ポンド | 148.51円 | 151.48円 | 211.75円 |
三菱UFJ銀行公表のTTS。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの公表資料を参照しています。
私が本格的に回していたのは2017〜2018年です。年商3,500万円というのは2018年の数字なので、その年のレートで比べます。
同じ100ユーロの商品が、2018年の年間平均では13,192円、2026年9月14日のレートでは17,955円。 為替だけで比較すると、商品代金の円換算額が約1.36倍になります。
これは年間平均と特定日のTTSを比べた参考計算です。実際のカード決済・送金のレートや手数料とは異なり、送料・関税・輸入消費税を含む仕入れ総額の比較ではありません。
私が海外買付をやっていた2017〜2018年は、今回比較した2026年9月14日より、ユーロに対して円高でした。 当時の利益率をそのまま今に持ってくることはできません。
そしてもうひとつ。当時の私の感覚では、ヨーロッパのショップに日本人バイヤーからのメールが多く届いていました。 向こうも慣れているように感じた。「継続して買いたい」も、特別な申し出ではなかったのだと思います。
ただし、今、日本人バイヤーからの問い合わせがどれだけ増減しているかは確認していません。同じ文面が同じように受け取られるかも、分かりません。 これも検証していません。
「だから今は稼げない」とは書きません。 売価も相場も変わっているので、そこは別の話です。書けるのは「同じ100ユーロの商品代金を、上記のレートで円換算すると約1.36倍違う」ということまでです。
まとめ
今回、できたこと
- 英文メールのたたき台をAIに作らせること
- 聞きたいことを整理した英文を出し、別のAIで見直すこと
- 逆翻訳を使って、質問や条件が抜けていないかを確認すること
まだ解決していないこと
- 英語が読めない私には、ニュアンスまで確認しきれない
- 逆翻訳や別のAIの添削だけでは、英文の正しさを保証できない
- 返事が来るかは、文面だけでは決まらない
- 為替の前提が異なり、当時の利益率をそのまま使えない
「英語ができないから海外買付ができない」という参入障壁は、かなり下がったと思います。 私自身、読めないまま10年やっていたので、元から乗り越える方法はあったとも思います。
ただ、下がったのは入口の負担です。 その先の、返信をもらうこと、条件を詰めること、利益が残るかを判断することは、別に確かめる必要があります。
次の記事
メールで「日本へは送れません」と言われたら、そこで終わりではありません。
ただし私は当時、エルメスだけは、その方法を使いませんでした。 理由があります。
日本へ発送してもらえない場合の対処は、次の記事にまとめています。
参照資料と補足
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「2017年末及び年間平均」:ユーロ・英ポンドの年間平均TTS。
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「2018年末及び年間平均」:ユーロ・英ポンドの年間平均TTS。
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「2026年9月14日の為替相場」:同日のTTS。
- ルイ・ヴィトン公式「アウトレットに関する案内」:正規販売経路と24S.comに関する記載。
- CHANEL公式「Fashion FAQ」:ブティックへの問い合わせ・百貨店を区別した案内。国ごとに条件が異なります。
※ 参照確認日:2026年9月15日。
※ 記事中の英文は、実際に送って反応を確認したものではありません。今回記録したのは文面の作成と見直しであり、返信率や取引の成立を保証するものではありません。
物販で使えるAIを探している方へ
英文メールだけでなく、商品説明・リサーチ・問い合わせ対応まで、物販で実際に使えるAIを検証しています。まずは実例を見ながら、自分の作業のどこをAIに任せられるか確認してみてください。


コメント
コメント一覧 (1件)
[…] → BUYMAの買付先に送る英文メールを、AIに書かせてみた […]